「人手が足りないから雇い入れたものの、契約社員のまま数年が過ぎている」——建設業の経営者からよく聞く話です。有期雇用のまま技能を身につけてもらっても、正社員化のタイミングを逃し続けてしまうケースは少なくありません。人件費の増加を懸念して踏み切れない企業も多いですが、実はこうした正社員化を後押しする公的な助成制度があります。それが「キャリアアップ助成金」です。

建設業は天候や受注量によって仕事量の繁閑差が生まれやすく、季節工や登録型の技能者、有期契約の作業員に頼らざるを得ない場面が少なくありません。一方で、技能継承や人材の定着を考えると、経験を積んだ有期雇用の従業員を正社員へ転換していくことは、中長期的な人材戦略として重要な選択肢になります。ただし、正社員化には社会保険料や賞与など人件費の増加が伴うため、二の足を踏む中小建設会社が多いのが実情です。

まず整理しておきたいのは、「キャリアアップ助成金」と「CCUS(建設キャリアアップシステム)」は名称が似ていますが別の制度だという点です。CCUSは技能者の資格・就業履歴を業界横断で登録・蓄積する仕組みであるのに対し、キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者の正社員化などを支援する厚生労働省の助成金制度です。両者を混同したまま申請を検討すると手続きが噛み合わなくなるため、まず制度の違いを押さえておく必要があります。

1. 正社員化コースの仕組み

有期雇用や契約社員として一定期間雇用してきた労働者を正社員に転換した場合に、事業主に対して助成金が支給される仕組みです。対象労働者の人数や転換の形態(有期雇用から正規雇用へ、無期雇用から正規雇用へ、など)によって支給額の枠組みが異なります。具体的な支給額や要件は年度によって見直しが行われるため、申請前に厚生労働省または都道府県労働局が公表する最新の案内で必ず確認してください。

2. 対象となる労働者の要件

助成の対象になるには、転換前に一定期間雇用されていることや、転換後に一定期間以上の雇用継続が見込まれることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。あわせて、就業規則に正社員転換制度をあらかじめ明記しておくことも前提になるため、制度化されていない場合はまず社内規程の整備から着手することになります。

3. 申請の流れと必要書類

一般的には、正社員転換制度を就業規則やキャリアアップ計画として整備し、労働局へ事前の計画届を提出したうえで実際に転換を行い、一定期間経過後に支給申請を行う流れになります。就業規則、賃金台帳、出勤簿など、転換の事実と雇用条件の変化を示す書類の準備が必要になるため、余裕を持ったスケジュールで進めることが望ましいでしょう。

4. 建設業特有の留意点

建設業では日給月給制や現場ごとに異なる雇用形態が混在しやすく、賃金台帳の整備が後回しになりがちです。申請の土台となる勤怠・賃金データが整っていないと、転換の事実を証明する書類作成に時間がかかります。日々の勤怠・給与管理をデジタル化しておくことは、いざ助成金を申請する際の手間を減らすことにもつながります。また、他の雇用関係助成金と要件が重複する場合は併給調整が必要になることがあるため、複数の助成金を検討する際は事前に労働局へ確認することをおすすめします。

Universal Knightでは、建設業の人材定着・育成コンサルティングの一環として、正社員転換にあたっての就業規則の整備や、勤怠・賃金データのデジタル化についてもご相談を受け付けています。助成金の要件確認そのものは社会保険労務士など専門家との連携が前提になりますが、申請の土台となる社内体制づくりからサポートすることが可能です。

有期雇用の従業員を正社員化することは、人手不足が続く建設業において技能継承と定着率向上の両面で効果が期待できる選択肢です。キャリアアップ助成金はその後押しとなる制度ですが、要件や支給額は年度により変わるため、まずは最新の公式情報を確認したうえで、自社の就業規則や勤怠管理の整備状況を見直すところから始めてみましょう。

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